人類史上最古の記録された法典と言われている『ハンムラビ法典』。学生時代、歴史の授業でこの中の「目には目を、歯には歯を」というフレーズを聴いたことがある、という方も多いのではないだろうか?

「目には目を、歯には歯を」は、「こちらがやられたことと、同等の報いを相手にも与えてよい」という意味合いではあるが、この法典をよくよく紐解けば、このフレーズの意図は「復讐してヨシ!」という単純なものではないことが分かる。
紀元前1770年頃のバビロニアでは、暴力行為が互いの報復によってエスカレートすることがしばしばあった。とくに、殺人に対する報復は、むしろ神聖な行為とみなされたので、報復が報復を呼び、互いに当事者がいなくなるまで繰り返された。
そこで、ハンムラビ王は、社会秩序を維持するために、「同害報復」の原則を定めた。報復する相手は当事者のみとし、同等の処罰を与えるというものだ。つまり、「やられたら、やり返せ!」ではなく、「やられても、必要以上にやり返したらダメですよ」というのが、「目には目を」の本来の意味なのだ。
さて、先日とあるブログの記事を読んでいたらこんなことがあったらしい。
飼い主が小型犬2匹のリードを手放して休憩していて、突如犬たちがオシドリさんを襲いに走り出して肝を冷やす。
オシドリさんたち必死に逃げて、飼い主も止めに入って事なきを得たけれど、メスは足を傷めたようで引きずっていた。
人がいない早朝とかリードを外す人もいるけれど、これからの時期ヒナちゃんやエゾリスさんちの子が地面にいたりするからやめて欲しい。
飼い主が優しい大人しい子と思っていてもそれは単なる思い込み、親ばか。好奇心や狩猟本能までコントロールできないからね。
確かに、わたしもわんこの散歩の時などにリードを外す行為は勘弁してほしいと思う。その時は故意ではなかったが以前、ニア(Mシュナウザー)と散歩をしていた時に大型犬とすれ違い、そのわんこが吠えていたので、そそくさとその場を立ち去ろうとしたら、なんと興奮していたわんこのリードが突然外れて、ニアに向かって突進してきたのだ。とっさにニアを抱き上げ、きゃーと大声を出して一目散に逃げ帰り事なきを得たのだが…その後そのわんこはどうなったのか確認する余裕もないぐらい怖い思いをした。
なのでこの筆者の仰ることはごもっともなのだが、この記事のコメ欄でのお言葉は、あまりに乱暴過ぎではないか。
> 〇〇さん ワンコね、他人にとっては犬畜生だからね~
この方は公園の鳥や小動物の観察や写真撮影を趣味にしているようで…以前は鳥を飼っていたようであるから、その大好きな鳥がわんこに襲われたことで相当憤りを感じたのであろう。
しかしながら、この場合、非難の矛先は、わんこの“飼い主“に向くべきであって、“ワンコは他人とっては犬畜生“などと…愛犬家全員の気持ちを少なからず逆撫でするような“差別用語“を、この方が言っていいということにはならないだろう。
『目には目を、歯には歯を』の本意ではないが、非難されるべきは、“犬のリードを離した飼い主“であって、リードを離されたわんこたちが本能の赴くままに動いてしまうのは仕方ないこと。そして、大概のわんこの飼い主は、マナーを守っている人がほとんどだと思うが、往々にして、そういうマナー違反のケースが悪目立ちしてしまう側面も大きいと思う。
それからこの方はこんなことも仰っていた。
> 〇〇さん キタキツネが餌に狩るのは仕方ないけれど、飼い犬が遊び半分で公園の生き物を狩るのはアカンよねー
この方…キタキツネにどれほどの思い入れがあるのかわたしは分かりかねるが、野生のキタキツネであろうと、飼い犬であろうと、動物であることには変わりは無いではないか。
そしてそもそも、飼い慣らされたわんこに、遊びとホンモノの狩の区別など出来る訳もなかろう。その区別をつけてコントロールするのも飼い主の責任ではないだろうか。
なので、わたしはその人に言いたい。
言いたいことが、あるならその場で、その飼い主に言ってやればいい。でも今のご時世、どんな報復があるか分からないから言えないと言うのであれば、ブログで、『“ワンコは他人とっては犬畜生“』などと他人の可愛いわんこに八つ当たりするのはやめてほしい。
まあ、こんなこと言っても詮無いことだが、少し前まで近所のゴミ収集所でも、カラスの被害に大いに悩まされてきた。なのでカラスは大嫌い。海に行けばトンビにおやつを盗られたこともあるし、スズメはうちの庭の作物を食い荒らしたり、せっかく蒔いた種をほじくり出して食べてしまうし、残念ながら、野鳥のほうが、わが地域の住民にとっては飼い犬よりもはるかに迷惑な害鳥でしかないのが現状なのだ。むしろこちらのほうが人間がコントロールが出来ない“畜生の所業“ではないのか。
またもっと大きなところでいうと、鳥インフルエンザを媒介するのは渡り鳥だとも言われている。それにより毎回何万匹もの鶏が殺処分されるという痛ましいことが繰り返されている。それにより鶏卵や鶏肉の流通にも少なからず影響が出ていることも事実だ。
なのでわんこのリードを離す非常識な飼い主は論外として、愛鳥家の方には大変申し訳ないが、日常的に鳥害に悩まされている人のほうがはるかに多いのが現実だ。だが表立って鳥を悪し様に言う人が少ないのは、『それは“野生動物“のことだから』と“寛容“に見ているからだろう。
そしてそもそも論だが…ひな鳥のようにまだ飛んで逃げられない場合を除き、飼い犬が鳥を襲って被害を与えるケースがどれほどあるというのだろうか。ほとんどの鳥は鳥同士で侃侃諤諤とやっているものではないだろうか。
なので個人的には、その方がたまたま見かけたレアケースをもって、『犬畜生』などと揶揄されてしまうのはとても残念なことだと思っている。
ちなみに、野生のキタキツネに関しては、エコノキックスの感染が怖いので、遠巻きにみるだけならまだしも、むやみやたらに近づきたいなどと思ったこともない。いやむしろ熊のようなあきらかに驚異の存在とは違うだけで、“増えすぎた鹿“と同じ立ち位置にあるのでは?と思うぐらいだ。
あのコロナウイルスの感染経路もいまだ完全に解明されたとは言えないが、今まで判明していることからすると、“2002年、中国の広州で重症肺炎SARS(致死率10%)が発生し、香港を経由して世界各地に広がって行った。 原因として同定されたのはSARSコロナウイルス(SARS-CoV)であり、ゲノム配列のよく似たウイルスが広東省深圳市の食品市場で売られているハクビシンなどの小動物から見つかった。“ということだ。いずれにしても、その前のエイズウィルス然り、未知のウィルスの起源のほとんどは、野生動物との接触によるものだと言われている。
なのでむしろ、人間にとっては、襲われた鳥が可哀想というより、ペットをむやみやたらに野生動物に近づけることのほうがリスクを伴うのではないかとさえ思う。そういう意味でも、犬のリードを離す行為は慎んでいただきたいと思う。
そして鳥を愛するあなた。
あなたが鳥を愛すると同じように、わたしのように犬を愛する人もいる。だから、一部の不心得者の行いだけを論い、公の場で『犬畜生』などと悪し様に言うのも慎んでいただきたい。
わんこに罪はない。それどころかマナー違反の飼い主によって『犬畜生』などと汚名をきせられた“被害者“ではないかとさえ思う。
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