山口県長門市と言えば、あの金子みすゞさんの出身地で、今回の長門訪問で記念館があることを知り、ようやく足を運ぶことが出来た。

恥ずかしいながらわたし、「私と小鳥と鈴と」「こだまでしょうか」など数点の作品しか存じあげなかったが、館内を歩き彼女の幼少期から軌跡を辿ってみると…大変な読書家で、西條八十などの詩人に影響を受けて詩作を始め、生涯で約500編もの詩を残したことを知った。

作品は、一貫して自然や命への優しいまなざしが込められているのが印象的だ。
しかし結婚後は、夫から詩作を禁じられ、娘の親権を守るために1930年、26歳という若さで自ら命を絶つという壮絶な最期を選んだ。
若くして才能を開花させ、若くして散った彼女の生き様を現代ではなかなか想像することが出来ない。
しかし改めて彼女が残した作品の世界観と重ね合わせてみると、彼女が“守りたかったもの“の何たるかを感じることは出来る。

現代(いま)を生きるわたしたちが、言論の自由を謳歌出来るのも、多くの先人たちが、当時の常識と戦い続けてきたおかげなのだ。
「みんなちがって、みんないい」
これは、それぞれが「ひとりよがりな」意見を声高に叫ぶのではなく、それぞれの「違い」を見つめる“優しいまなざし“を表現している。
さて、金子みすゞ館を訪れる前に、少し時間を遡る。
ホテルの朝食は、至ってシンプルなのだが、地元の新鮮野菜に温泉卵、フォカッチャ(おかわり自由)、萩特産の「夏みかんジュース」、そしてリボリータ。一見物足りなく感じる方もいるかもしれないが、フォカッチャの塩加減と温泉卵の相性もバッチリ。上質なことこの上ない。
間違っても朝食バイキングで食べ過ぎて腹パンなんて下品な輩たちには似つかわしくないだろう(爆)実際、この街を訪れる人たちは、そう多くはなく、某国の騒々しい輩たちを見かけることもないので、こういった静かな時間を愉しみたい人たちにはうってつけの場所だ。

今回特に気に入ったのが、Reborrita~ Re=「再び」とか「繰り返す」Borrita=煮る…これは、イタリア、トスカーナ地方の郷土料理で、色々な野菜を細かく切って煮るミネストローネにパンを入れて煮返す…日本の「おじや」のようなひと皿。
旅に出ると、どうしても暴飲暴食になりがち。そしてたくさん歩き回るので、どうしても胃もお疲れ気味。なので、このぐらいのボリュームがちょうどいい。
そういえば客室にはTVがなかったが、これもよくよく考えてみれば、温泉に入ったり、周辺を散策するなど、宿泊客が「体験すること」を愉しむ為の配慮なのかなと思った。
もちろん、館内でWi-Fiは使えるので、情報収集するのに不便はない。
このホテルの全てが「過不足がない」のだ。
そしてこのあと、ホテルをチェックアウトして向かったのがまた更なる絶景なのだが…今回はこの辺で。
鉄子に旅のプランニングを頼んだ時点では…正直、「山口にいったい何があるというんですか?」(村上春樹風)と思っていたのだが、意外にも、今のわたしの心にブッ刺さる要素がてんこ盛りの旅になった。
北海道、石垣、宮古、西表etc…そして、世界の名だたる場所を数多く訪れたつもりでいたが、それは単なる勘違い…思い上がりだったと反省したぐらい…
山口県には、たくさんの絶景と歴史と文化を感じさせる場所があり過ぎた。
こんな濃密な時間、なかなか味わえるものではない。
わたしの全細胞が感動で震えた!!なんてね(笑)


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