米ハワイ州マウイ島で発生した山火事で、同州のアン・ロペス司法長官は11日、地元当局の火災への対応について捜査を始めると表明した。米CNNなどによると、8日の火災発生時に警報のサイレン80基が作動していなかったことが明らかになった。住民に火災が周知されなかったことで被害が拡大した可能性があり、司法当局が検証するとみられる。
作動しなかった原因は明らかになっていない。地元当局は携帯電話やテレビ、ラジオを通じて緊急警報を流したと説明している。AP通信によると、住民からは「サイレンが聞こえず、近くで炎を見て初めて身の危険を感じた」などと避難に十分な時間がなかったことを示唆する証言が出ているという。
地元当局は11日夜、これまでに確認された死者は計80人になったと発表した。少なくとも1000人と連絡が取れなくなっており、被害が甚大な島西部のラハイナを中心に、犠牲者はさらに増える恐れがある。CNNによると、過去100年間に米国内で起きた山火事の死者数としては、2018年にカリフォルニア州で発生したキャンプファイアによる火災の85人に次ぐ規模となっている。
在ホノルル日本総領事館によると、11日時点で日本人が犠牲になったとの情報はないが、島西部在住で連絡がつかない人もいるという。地元当局によると、ラハイナの火災は85%が鎮圧された。住民は11日昼から一時帰還を認められたが、町は壊滅状態で夜間の外出は禁じられている。
読売新聞オンライン
世界のほかの多くの場所と同様、マウイ島も炎の時代を意味する『パイロセン(pyrocene=炎の時代)』に否応なく突入している。山火事が自然現象として発生するカリフォルニア州のような地域では、これまで以上に猛烈な勢いで山火事が燃え広がり、煙が高く上昇して雷雲を生み出したり、植物の新たな成長を促すために生態系をリセットするどころか破壊したりする状況が頻発している。
そして、かつて山火事がめったに発生しなかったマウイ島のような場所でも、住民と政府は山火事の増加への対応に苦慮している。
今回のマウイ島の山火事は強風によって拡大した。マウイ島から数百キロメートル南の地点をハリケーン「ドーラ」が通過。一方で、ハワイの北には高気圧が張り出し、この熱帯低気圧と高気圧に挟まれ、マウイ島全域に最大瞬間風速35mの突風が吹き荒れ、山火事が燃え広がったのだ。
ラハイナのような町に火の手が達すると、炎は建物から建物へと簡単に飛び移っていく。
現在のマウイ島は乾季。米国の干ばつモニターによると、島の一部はすでに異常に乾燥しており、中程度から重度の干ばつレベルに達していたという。
マウイ島に限らず、今年は欧州は熱波に見舞われ、森林火災が多発している。背景には気候変動による気温の上昇のみならず、都市部に人口が移動したことで十分に管理されていない森林が増えたことも影響していると言われている。
SDGs…いうは容易いが、ただやみくもに自然を保護するのではなく、雑草や低木を除去し、自然の防火帯として機能して在来種を守る湿地帯を増やすなど人間が植生を管理しなければいけない。そうしなければ、今後もラハイナのような悲劇的な運命に陥る地域が発生するに違いない。
今回一番被害が出た、マウイ島最大の街・ラハイナ。1000軒以上の家が焼け、街は、ほぼ壊滅状態に。
住民:「しばらくこのままだ。復興には何年もかかるでしょう。胸が張り裂けます。街の長い歴史が灰とちりになってしまった」
日本にゆかりのある建物も全焼した。ラハイナ浄土院。お寺は、明治時代に日本から移民してきた人たちが建てた。
ラハイナ寺院・原源照住職:「先祖から1世、2世が守られてきたお寺ですから、私ども深い愛着がありますから。私どものお寺は、移民が最初に来たのは、明治元年、元年者と呼ばれていますが、元年者が来たのが最初」
今回の火事で移民100年を祈念して建てられた三重塔も焼け落ちてしまった。また、ほかの宗派のお寺や教会も焼けてしまっていて、1世紀以上にわたってマウイ島に根付いてきた日系コミュニティーにも大きな影響が出ている。
ラハイナ寺院・原源照住職:「逃げ遅れた多くの方の遺体が、まだ、がれきの下にあるということで、本当に心を痛めている。檀家の方の家もたくさん焼かれましたので、一同、頭の中が真っ白。何を考えていいか、わからないような状況になっております」
マウイ島からは、これまでに3万人を超える人たちが島の外に避難しているが、まだまだ多くの人が足止めされている。
現在、少なくとも11人の日本人観光客が取り残されているという。
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