本来なら企画展の説明に先立って国立西洋美術館についてお伝えしなければいけませんでした。
国立西洋美術館の建築
東京都上野公園にある国立西洋美術館・本館は、フランス政府が日本を含む7か国と共同で推薦していた「ル・コルビュジエの建築作品(7か国17作品)」の1作品として、「ル・コルビュジエの建築作品-近代建築運動への顕著な貢献-」という名称で他の16作品とともに一括して、 2016年、文化遺産に登録されました。
ル・コルビュジエの建築作品-近代建築運動への顕著な貢献- は
- ル・コルビュジエの作品は、人類の創造的才能を表す傑作であること
- ル・コルビュジエは、新しい建築の概念を広め、20世紀における世界中の建築に大きな影響を与えたこと
などが評価されました。
また国立西洋美術館は
- ル・コルビュジエが日本に残した唯一の建築作品であり、日本における近代建築運動に大きく貢献したこと
- ル・コルビュジエが提唱した近代建築の五原則を表現し「無限発展美術館」の思想を体現していること
などが評価されました。
国境をまたいだ世界遺産(トランス・バウンダリー・サイト)としては日本では初登録、大陸をまたいだ世界遺産(トランス・コンチネンタル・サイト)としては世界で初登録となりました。
国立西洋美術館は、ル・コルビュジエが設計した国内唯一の建造物(1959年竣工)。ピロティー、スロープ、自然光を利用した照明などル・コルビュジエの建築的な特徴がよく表現されている作品で、日本の戦後建築に大きな影響を与えました。
また本館は、ル・コルビュジエが長年追求してきた「無限に成長する美術館(美術作品が増えても必要に応じて外側へ増築して展示スペースを確保できる美術館)」構想を実現した美術館の一つです。
ピロティーとなっている1階の正面入口から建物の中心となるメインホール(19世紀ホール)に入ると、スロープで2階の展示スペースへのぼり、回遊することができるようになっています。
ちなみにピロティーとは、フランス語で建物を支える杭のこと。柱だけで構成されている壁のない吹き抜け空間をもった建築様式またはその空間を指します。日本では丹下健三による広島平和記念資料館の設計で初めて用いられました。
松方コレクションを基に設立された美術館
国立西洋美術館は、株式会社川崎造船所の社長であった故・松方幸次郎氏がヨーロッパ各地で集めた絵画や彫刻(松方コレクション)を基に、1959年(昭和34年)に設立された美術館です。
松方コレクションは戦後、サンフランシスコ平和条約によりフランス政府に敵国資産として差し押さえられました。その後、日仏文化協定の調印(1953年)を経てフランス政府の好意によりその一部が日本に返還されることになりました。返還に際しては、フランス政府からそれを受け入れるフランス美術館の創設が不可欠であるとの条件が提示され、ル・コルビュジエの設計で建設されました。
国立西洋美術館の竣工は1959年、その後1979年(昭和54年)に新館が、1997年(平成9年)に前庭地下に企画展示館が増築された(いずれの建物もル・コルビュジエに師事していた前川國男設計事務所が設計)。20世紀建築の建築作品として世界遺産に登録されたのはわが国初となります。
新館は必見スポット
新館には、松方コレクションを代表するクロード・モネの『睡蓮』をはじめ、19世紀から20世紀の絵画が展示されています。写実主義や印象派、近代絵画に興味がある方にとって必見のスポットです。
◆クロード・モネ作品◆
◆ピエール=オーギュスト・ルノワール作品◆
◆ポール・セザンヌ作品◆
◆ ばら フィンセント・ファン・ゴッホ◆
“ひまわり“のイメージが強いゴッホですが、彼が描いた“ばら“の美しさも格別です。本作は、1889年に入院したサン=レミの精神療養院に咲くばらを描いたものです。最晩年の作品に特徴的な、激しく、うねるような筆づかいがすでに認められます。
◆座る女 藤田嗣治◆
1929年に描かれたこの作品のモデルはよくわかっていませんが、藤田独特の乳白色の絵肌、これまた透き通るような軽やかな模様のワンピースをまとっています。背景には狩野派のような金地の花鳥図が装飾的に配されています。遠目からでも目立つこの乳白色と金色のバランスが絶妙な作品です。
版画で「観る」演劇
本館ではこんな企画展も同時開催中でした。本展は常設展の観覧券または「ピカソとその時代 ベルリン国立ベルクグリューン美術館展」観覧当日に限り同展観覧券で観覧することが出来ます。これまた演劇好きには堪らない企画ではありませんか。
しかし今回も幸か不幸か、企画展、常設展共に内容が濃すぎてさらっと流して観るにとどめました。
あとがき
そろそろ退場の時間が近づいてきました。最後はやはりここで一枚パチリ。
余裕を持って予約したはずでしたが、もう割とギリギリなので、ランチ忘年会のお店に向かうことにしました。
ランチですが、飲み放題でもないのにそこそこ飲んじゃいました。その模様はまたのちほどお伝えしたいと思います。それでは。
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