大塚国際美術館、、、昨日は本当にかけ足で紹介してしまいましたが、今日も引き続き個人的な思い入れがたくさん詰まった鑑賞の軌跡をお伝えしていこうと思います。
環境展示・B3Fは必見スポットが目白押し
昨日のシスティーナ礼拝堂でも触れましたが、この美術館の大きな特徴としまして、礼拝堂や壁画などを空間ごと再現する『環境展示』が多く取り入れられています。エル・グレコの祭壇衝立復元のあと、アレクサンダー・モザイク、スクロヴェーニ礼拝堂に至る途中にも多くの必見スポットがあります。
まずはB3階の「聖マルタン聖堂」→「聖ニコラオス・オルファノス聖堂」→「秘儀の間」→「鳥占い師の墓」→「貝殻のヴィーナス」と順を追ってご紹介していこうと思います。
◆聖マルタン聖堂◆
フランスのパリから300kmほど南にある小さな村・ノアン=ヴィック村に建っている聖堂を環境展示として再現しています。フランスロマネスクらしい淡い色使いや人物描写が特徴的です。
レオナルド・ダ・ビンチが描いたことで有名な最後の晩餐。この壁画が描かれた中世という時代は、レオナルドの頃より考えが厳格で「裏切り者は、正しき者と一緒にしてはならない」というお約束のようなものがあったようです。
それがこの絵の中でも確認できて、ひとり目立ってテーブルの前にいるのがユダで、誰が見ても分かるように描かれるのが原則だったそうです。
これらは文字の読めなかった当時の人たちが、聖堂にやってきて神父さんのお話を聞いてキリストの生涯を確認する為の壁画なので、面白くて親しみやすいイラストのように描かれていたのでしょう。
◆聖ニコラオス・オルファノス聖堂◆
こちらは、ビザンティン帝国時代に建てられた聖堂で、ギリシアのテサロニキという街に建っています。テサロニキは紀元前315年にマケドニア王カサンドルが作った街で、王の妻の名前をとって、テサロニキと名づけられました。
聖堂に入ると、まずその聖堂に捧げられた聖ニコラオスが迎えてくれます。
入り口右に描かれた人物が聖ニコラオスです。
この方の伝説がのちにサンタクロースの物語になっていきます。入り口上の壁面には聖ニコラオスの生涯が描かれています。
よくぞここまでと感謝するしかないぐらい、劣化具合までリアルに再現されています。
そして、サントリーニ島だけでなく、ますますギリシャ全般に行ってみたくなりました。
◆秘儀の間◆
秘儀の間は西暦79年のヴェスヴィオ山の噴火によって埋もれてしまったポンペイ市壁外に残っていた館で、1910年に発見され、1929年から1930年の再調査で全貌が明らかになった別邸で、内部に「ディオニュソス秘儀」の壁画が描かれていることから、そのように呼ばれています。
この独特の雰囲気、、、朱色が背景で描かれている壁画なんて今までみたことありませんでした。そしてもっと驚いたのは、この完成度の高い作品が2000年以上前に描かれていたということです。
ポンペイに残されている数ある壁画の中でも保存状態がかなりよく、この展示で再現されている通り巨大な絵画のまま残されているそうです。
◆鳥占い師の墓◆
普通どなたかのお墓の内部を見学するなどという経験はなかなか出来ないですよね。
こちらは、イタリア、モンテロッツイ墓地にあるのだとか。紀元前6世紀後半頃、ローマに先行したエトルリア文化に影響を受けたという独特の壁画。
現在、本物は保存の為に入場できなくなっているようなのでより価値が感じられます。
それにしても、鳥占いってどんな占いなんでしょうね。何も調べなくても気づいたこともあります。これだけの立派なお墓があるということは、この方、相当身分が高かったのではないかということです。
そして今回はちゃんと調べました。というのもコメント欄でブロガーねぇやんさんから情報を頂いたのですよ。ありがとうございます♪
鳥占い師とは、古代エルトリアや古代ローマではアウグルというれっきとした公職でした。日本語では鳥朴官、時には神官とも訳されいたのだとか。
アウグルの主な役割は鳥の鳴き声や飛翔状況を観察して、その状況を基に神の意思を示すことでした。アウグルの意思は宗教に留まらず、戦争や商業といったローマの公的な意思決定にも関与したとされています。
◆貝殻のヴィーナス◆
そしてわたし個人的にはこの展示がとても気に入りました♪
こちらは西暦79年のヴェスヴィオ火山の噴火により消滅したポンペイから出土した貝殻のビーナスです。
ポンペイでも屋外(中庭)から発見されたため、大塚美術館でも屋外に展示されています。
こんなふうに植え込みの中にテラコッタが転がっていたりして、心憎いばかりの演出です。
ギリシア時代ヴィーナス(アフロディテ)は「美の女神」であり、ローマ時代にそのまま女神として受け継がれてからは「豊饒(ホウジョウ)の女神」の意味もプラスされ、まさしく庭園の守護神としてぴったりのイメージだったのです。
ステキなお庭ですね。いつかわが家の庭も素敵になったら、息子の彼女にお願いして絵を描いて貰いたいなどと、また勝手な妄想に耽ってしまいましたとさ。
聖テオドール聖堂
貝殻のヴィーナス、スクロヴェーニ礼拝堂ときて、、、B3Fにはもうひとつ環境展示があります。それがこの聖テオドール聖堂です。
こちらのオリジナルは奇妙な岩が群居しているカッパドキアにあります。この再現された聖テオドール聖堂を見て、、、ある意味この美術館の相当な本気度を感じることが出来ました。
本物を見たことがないので断言するのはおこがましいのですが、いま本当に自分がオリジナルの場所にいるような錯覚に陥ってしまいそうでした。
ここにいると一瞬、時間と空間の感覚を忘れてしまうのかもしれません。
わが唯一の望みの 貴婦人と一角獣より
もちろんこの他にもお届けしたい画像はたくさんあるのですが、本当にキリがないので、B3Fでこれだけはと思う作品をあとひとつだけ紹介して、本日の結びとさせて頂きます。
こちらは、フランス・パリにある国立クリュニー中世美術館の至宝・中世ヨーロッパの最高傑作と言われる貴婦人と一角獣のタペストリー6枚連作のうちの「我が唯一の望み」を再現展示しています。中世において最も美しい色と思われていた鮮やかな赤色に目を奪われます。空想上の幻の動物、一角獣(ユニコーン)が描かれていて謎めいた魅力のある作品です。
こちらは、機動戦士ガンダムUCの中でも重要なモチーフとして登場しています。
世界にはまだこんなに美しくミステリアスなものが存在するのですね。うーん、確かにこれは必見でございます。フランスにもまた行きたくなりました。
そういえば昨日作った寄せ植え、雨の中で生き生きとしていました。やはり美しいものを見るといつも心癒されます。
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