あることの余韻にひたる間もなく次の予定が待ち受けていることほど興醒めすることはありません。とはいえ時間は無限にあるわけもなく、、、そんなとき、友人が気を利かせてくれたのはとても嬉しいのですが、「ネスプレッソのスイッチが入らない」と暗に呼ばれてしまったりすると、途端にひとりの世界に入り込みたくなります。
わたしは誰かの手を煩わすぐらいなら、無理して珈琲を飲まなくてもいいのだけれど、、、彼女の気持ちに免じてそんなことは気にしないふりをしなければいけません。
ことさら素晴らしい芸術に触れたあとは感覚が研ぎ澄まされ過ぎているので誰にも触られたくない心境になります。激しい運動をしたあとがそうであるように、圧倒的な芸術を目の当たりにした時は脳のクールダウンが必要になるからです。
たとえどんなに気の置けない友人であったとしても、わたしと全く同じ感性であるはずもなく、、、もしわがままが許されるなら、芸術鑑賞の時だけはひとりになりたいです。
な〜んて気分になるぐらい心を揺さぶられた“アートツアー“でした。
今回のホテルステイを愉しむ旅は、一休.comさんの計らいでより充実したものとなりました。
通常の宿泊プランでも百段階段のチケットは半額で購入出来るのですが、今回は期間限定でダイヤモンド会員だったので、チェックインの際、2枚の招待券を頂きました。
そして、チェックアウトも、通常12時のところを13時まで延長になったので、アートツアーのあと、部屋にスーツケースを置いたまま百段階段の鑑賞をしても時間の余裕がありました。
はいこちらはお馴染みのエレベーターです。
今となってはすっかり目が慣れてしまいましたが螺鈿細工が施されています。
扉の内側にもまた華やかです。ほんの少しの間ですが、スタッフの方から案内もありました。
エレベーターの扉が開くとこんな可愛らしい金魚さんたちが。
そしてこちらは、かんざし作家さんの作品です。
照明作家・弦間康仁さんの作品
華やかなアートツアーの世界から、今度は一転して幻想的な世界に誘われます。
そして次の間では、、、今度は煌びやかな世界が広がっていました。
この照明は竹を素材として作られています。
アカリノワ「環・和・輪」は竹あかりの制作を通じて、良好な生態系(環)、里地里山での人と自然の共生(和)、そして周辺と自然とのつながり(輪)を取り戻し、後世に伝えることを目的に活動しています。2020(令和2)年には、国土交通省の地域づくり表彰で、全国地域づくり推進協議会会長賞を受章するなど、放置竹林により生じる深刻な環境問題を竹あかりアートで活用することで、未来を目指しています。
この展示がされている漁樵の間はこの百段階段の部屋の中で最も豪華な装飾が施されていますが、それに相応しい見事なアートです。
是非動画でもご覧になってみてください。
室内はすべて純金箔、純金泥、純金砂子で仕上げられ、彩色木彫と日本画に囲まれた美しさは息を呑むほどの絢爛豪華さです。床柱は左右ともに巨大な檜で、精巧な彫刻 (中国の漁樵問答の一場面)が施されています。格天井には菊池華秋原図の四季草花図、欄間には尾竹竹坡原図の五節句が極彩色に浮彫されています。
1954年東京生まれ。1979年アジア各地を放浪後、静岡県南伊豆町大瀬に居住。劇団はみだし劇場の美術小道具を担当。1985年に東京都立川にて「Rasen studio」を主宰。市川猿之助のスーパー歌舞伎における美術小道具や、吉田勘緑、人形浄瑠璃の舞台美術など活動の場を広げる。主な個展として、「天の馬 地の馬(福島・矢吹町大池公園)」「風に立つ巨人(神奈川・Artshere Fujino)」(ともに1992)。「六月の森(神奈川・早見芸術学園エントランスギャラリー)」(1993)、「天空への螺旋(埼玉・アートギャラリー山猫)」(1994)、「鐵國綺譚(新橋・アートギャラリー閑々居)」(2001)、「越後妻有大地の芸術祭」(2009)、「偶(神保町・福果)」(2014)、「瀬戸内国際芸術祭」(2019・2022)
福岡県八女市にて創業200年以上の歴史あるちょうちん屋「伊藤権次郎商店」。重要文化財や神社仏閣、お祭りの装飾用の提灯など伝統の技術を今に伝えています。8代目伊藤博紀氏は、伝統を守りながら、世界的に有名な企業が制作する映画の美術セットや商業施設のインテリア等に展開するなど、新たな提灯の可能性を広げる活動にも精力的に力を注いでいます。本展では、百物語の世界にふさわしい妖怪提灯の世界を展示いただきます。
こちら造形作家の細山田匡宏さんの作品も躍動感がありますね。本来動物は夜行性の生き物ですから、暗がりの中のほうが生き生きとしているのも頷けます。
自由をモットーに生きるアーティスト。1995年頃から活動を開始し、当初はシュルレアリスム絵画・立体造形など創作。2008年から猫をモチーフにした粘土造形を始める。現在は、物語る動物たちの粘土造形や画像を創作する。
この猫ちゃんたちのリアルでユニークな表情をみると思わず立ち止まらずにはいられなくなります。
1955年長野県生まれ。 金沢美術工芸大学油絵科卒業。京都高等工芸学校デザイン科教諭を経て、1995年にまる工房を開き独立。2000年第一回「日本招き猫大賞」受賞。以後、個展や企画展など多数開催。「だまし絵」などの視覚的な遊びを立体化するなど、見て楽しく、驚きのある作品を生み出しているユニークな作風のアーティスト。 2013年 BS朝日「時をかける浮世絵師~歌川国芳・江戸にスカイツリーを描いた男~」出演 2014年 NHK「美の壺~猫づくし~」出演
そしてこの切り絵作家さんの作品にも心惹かれました。
デザイン会社勤務を経て、1990年に独立。以後フリーランスとしてデザインとイラスト制作に携わる。1992年、イラスト・切り絵作家として、工芸村「ことうヘムスロイド村」に参加。この頃から猫をモチーフとした作品を作り始める。以後、東京・谷中のギャラリー猫町をはじめ、国内外で個展や展示を行う。 2014年 Discover Japan賞受賞(パリ) 2015年 日本招き猫大賞受賞(瀬戸市)
こちらは銅線をつないでつくられた作品です。
1969年神奈川県生まれ、東京芸術大学大学院美術研究科彫刻専攻修了。彫刻家として数々の立体作品、インスタレーションを発表。銅線をコイルのように巻き付けて、ゆらゆらと天井から落ちる光の粒に命を吹き込むように形を生み出す。2017年の中之条ビエンナーレでは鹿の立体作品を展示。静謐な中に漂う圧倒的な存在感を放ち好評を博した。その他個展、グループ展など多数出展。
作家さんたちのバックグラウンドを知りその作品を鑑賞していくと、ひとつひとつがとても深いです。と同時にそれらを全て取っ払って観ることもまた大切だと思います。
芸術とは観るというよりも、その作品から何を感じとるかということのほうが大切なのではないでしょうか。
何もこじんまりとした花器に活けることだけが、活け花ではないのですね。
こうやって部屋全体を使ってダイナミックに活けられた花たちもきっと驚きつつ、喜んでいることでしょう。
1991(平成3)年東京生まれ。江戸時代から継承されてきた伝統様式である「生花(せいか)」と、植物の魅力を造形的に表現する「現代華(げんだいか)」を指導の大きな柱としている「古流かたばみ会」。その次期家元として、各種花道展への出品やイベント装花をはじめ、時代に合った価値提供としてInstagramやYouTubeなどのSNSを通して、いけばなをやっていない人でも楽しめるコンテンツの提供も積極的に行っています。従来の価値観に捉われない作風と、いけばなの普及・研鑽に努める若手華道家です。
いまはSNSの発達により、誰でも自由に自分の思いを述べ、アイデアや作品を発信することが出来ます。とてもいい時代になったと思う反面、本当の驚きや感動を与えられるコンテンツがどれほどあるだろうと、、、ホンモノを目の当たりにして愕然とする自分がいます。他人の評価を気にするあまり、本来自分が研鑽に努めなければいけない時間を無駄なことに費やしてはいないか?ふとそんなことを思いました。
この扉が開き
エレベーターの中を見渡すと、そこには光り輝く唐獅子がこちらをみています。「そろそろ帰る時間だぞ」と念を押しているようにもみえます。
エレベーターを降りたロビーには、、、おそらく今回の展示にちなんだ花が活けられています。
このあと部屋に戻り、既に事前精算を済ませてあるので、カードキーをテーブルに置いて、フロントに部屋を出る旨を連絡して、、、ついに今回の旅も終わりかと思われました。
ところが、このあとも少しばかり嬉しいサプライズが。
ホテルから品川駅行きの送迎バスに乗ろうとすると「T様、スーツケースをお預かりします」と運転手さんが声をかけてくれました。それから品川駅に到着すると、わざわざ段差のあるところを越えて上のほうまでスーツケースを運んでくれて、「行ってらっしゃいませ」と笑顔で見送ってくださいました。まるで笑顔の玉手箱を貰ったような不思議な気持ちに包まれました。
これはまた頑張って、このホテルに泊まらねばと、自然とそう思えた瞬間でした。
最後に今回の旅はあまりにホテルの居心地が良すぎてふと、来生たかおの夢の途中を口ずさみたくなりました。おあつらえ向きと言ったらいいのか、このPV映像で世界の夜景が流れています。皆さんの知っている夜景あるでしょうか?
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